Vol.111-1
平成20年7月号
 

『行き詰ったら、時間軸で俯瞰する。』

仕事をしていて、「どうも周りが見えていない。ミスや漏れが多くて、周りを振り回してしまっている」「目標を達成できずに毎月がむなしく過ぎていっている」「良いことをやっているはずなのに、なぜか正当に評価されていない」というような閉塞感、行き詰り感に陥ったときの、わたしの打開策をご紹介します。それは、「時間軸で俯瞰する」作戦です。

やり方は簡単です。A4かA3の紙を1枚取り出して、上部に左から右へ1本線を書きます。そして、その線に日付目盛を入れる。そして、その下にやるべきことを時間軸で書き出す。具体例でお話しましょうか。たとえば、印刷会社の営業マンがミスや漏れが多かったとします。彼の仕事は、納品に到達するまでに、デザイン・校正・印刷・製本会社への外注などのプロセスをたどる。しかもそういう案件を1つ2つではなく、何件も抱えている。もしそれを頭の中だけで管理していたら、どうなるでしょう?手帳を見ても、最終納期しか書かれていない。それでは、まだ余裕があると思っていた案件が、フタを空けてみたら、実はすでに納期に間に合わない状況に陥っていた、なんてことになりかねませんね。
そのとき、「時間軸で俯瞰する」作戦です。まず抱えている仕事のスパンを考え、仮に2か月で完結するなら、日付目盛は60日分。縦に60本の線を引き、日付を入れます。そして、納品先ごとに始めから納品までのプロセスをいつ行うか書き入れていく。すると、それを書き終わった時点で気づくはず。「う~ん、思ったよりも、全然余裕がなかったんだ」と。
これは「未来に向けて全体をつかむ」作業です。それによって、「その1つ1つの仕事の重要度・緊急度は?」「それが他の仕事に与える影響は?」「必達期限は?」が視覚化し、直観的につかめるようになるので、結果的に仕事のバランス感覚が磨かれていきます。

一方、「過去からの流れを読んで未来を予測する」場合にも「時間軸で俯瞰する」作戦は有効です。たとえばわたしは最近、次に出すビジネス書を、どんな切り口・テイストにしようか考えるために、過去25年間の会計本のベストセラーの趨勢を時間軸で書きだしてみました。すると、いくつか併存するカテゴリーの発生と終えん、そしてその移り変わりが見えてきます。これも視覚化することで、「この流れはまだ続くのか?」「賞味期限はいつか?」「次の流れは?」がおぼろげながら見えてくるから不思議です。行き詰ったら、その状態を上から俯瞰するかのように紙に書き出してみると、結構、ブレイクスルーが起こりますよ。