Vol.107-2

平成20年3月号
 

『複数のアイデンティティを自分の中に持っておく。』

テニスをしているときに、「私はテニスが上手だ」というプライドが強すぎると、自分がちょっと調子が悪くて普段は勝っている相手に負けてしまうとイライラします。テニス仲間のリーダーになっていると、負けることによってその地位を失ってしまう気分になってしまうのです。「私にはテニスの技術しかない」と思いこんでいたら、「今日の君は強かったね。負けて悔しいよ。でも、いい試合だった。ありがとう」というような感謝のメッセージを伝えることはできません。「テニスが上手だ」という役割以外に、自分の役割がたくさんあることをしっかりと記憶させておくことができれば、この場合も、私はテニスを仕事にしているという役割を思い出して、「私はテニスを仕事にしているのだから、テニスで勝って喜んでくれる人がいるのはよいことだ」とプライドを捨てて考えることができるのです。実際は自分が考えているほど地位を失うことはありません。

(『人生が変わる感謝のメッセージ』 中山和義 著 大和書房 P.79より引用)

いつのまにか、仕事と自分のアイデンティティが一体化するという経験、ありませんか?わたしは自分の肩書として「ビジョナリーパートナー」を名乗って以来、その名称と役割に愛着を感じています。だからこそ、気がつくと「和仁達也=ビジョナリーパートナー」となり、常に周りの模範であらねばならない、仲間達よりも一歩先を進んでいなくてはならない、というようなプレッシャーを無意識に抱え込んでしまうことがあります。

わたしが会長を務めるユメオカでは、提携コンサルタントが月末にこの1か月の活動成果をネット上で公開しあう習慣があります。それをお互いに読み合うことで、自分の狭い世界に入り込むことなく、仲間の経験値や情報を自分の中に取り込むことができます。また、仲間が人知れず実践し、成果をあげていることを知ることで、「自分も頑張ろう」と発奮材料になったりもします。
ただ、そのようなポジティブなとらえ方ができるのは、自分の心が前向きになっているときだけです。長い人生のサイクルの中では、テンションが低く、心が後ろ向きになりがちなときもあります。そんなときに仲間の頑張っている姿に触れると、相対的に「自分は頑張れていない」「仲間に引き離されていく」という感覚に襲われて、心がざわめいてしまいます。
その結果、自分のアイデンティティが下がっていくのです。しかし実際のところは、全人格的に自分が誰かに負けているわけではありません。とらえ方がネガティブだと、そう感じてしまうだけなんです。そんなときは、自分にはどんなアイデンティティがあるのかを思い出してみると視野が開けてきます。わたしの場合、父親であり、夫であり、事業主であり、著者であり、講演家であり、少林寺拳士であり、格闘技ファンです。どれかがヘコんだときは、ヘコんでいないほかのアイデンティティの世界観にどっぷり浸ると、だんだん元気が復活します。あなたは、どんなアイデンティティを持っていますか?