Vol.109-2

平成20年5月号
 

『自分の才能は、人に教えてもらう。』

ぼくがこのキャラクターになるまでに、じつはかなりの時間がかかった。恥ずかしかった。人前で変な顔をしたり、変なポーズを取ったり、以前はそういうことが全然できなかった。恥ずかしいものは、道化師になったって変わらず恥ずかしい。道化師のぼくがいうのもなんだけど、ぼくは人よりよっぽどまじめな性格なんだと思う。転機は、ある人から公演で「バカキャラをやってくれ」と頼まれたこと。イヤだったんだけどなぜか断りきれなかった。「人からの頼み」って、たぶんすごい力を持っているのだろう。無理やり背中を押されたぼくは、なかばヤケクソぎみに「バカキャラ」になることになった。恥はひとたび捨てると、なぜ今までそんなことを恥ずかしがっていたのか、自分でも思い出せなくなるものだ。懸命になってドジを演じているうちに、いつの間にか「自分」と「役柄」との境目が消え、環境の笑い声に包まれながら、ぼくはステージと一体になっていた。自分の殻を破った瞬間。それはとてもすばらしい気分だった。才能は探すものじゃない。人とのかかわりあいの中で、自然に見つかるものかもしれない。そのときつくづくそう思った。

(『ホスピタルクラウン』 大棟耕介 著 サンクチュアリ出版 P.55より引用)

「人生は才能探しの旅である」とは、東京ディズニーランドの元総合プロデューサーの堀貞一郎先生の言葉。数々の偉業を成し遂げてこられた上に、多彩な趣味も楽しまれ、まさに人生を謳歌されている人物ならではの、含蓄のある深いお話でした。数年前にこのお話を伺ったときから、「ぼくの才能って、一体何だろうか?」という問いかけが始まりました。でもこれをイスに座っていくら自問しても、答えはなかなか出てきません。なぜでしょう?

それはおそらく、自分の才能は、自分としては当たり前過ぎて、目に留まらずにやりすごしてしまうからです。

  • 人が自分にどのような頼みごとをしてくるかに注目する。
  • あなたが何をしたときに、人が喜んでくれているかに注目する。
  • 人に、直接聞いてみる。

そんなことをしていくうちに、わたしは自分の才能は、「人の話を楽しく“積極的に”聴けること」「難しいことをわかりやすく表現すること」「コツコツ続けること」の3つだろうと、今のところは思っています。振り返ってみれば、その3つを武器にして、コンサルティングや執筆・講演など今の仕事をしていることにも気づかされます。そして、それがわかっていると、その才能をますます発揮しようという気にもなり、仕事が楽しくなります。

あなたは、ご自身の才能は何か、つかんでいますか?