Vol.110-1
平成20年6月号
 

『考えごとは、“上書き更新”するために書く。』

考えが堂々巡りしてしまって、なかなか解決策がみつけられないとき、どうしたらいいでしょうか?」
セミナーで参加者からそう尋ねられたとき、わたしは次のように答えました。

「その堂々巡りしている考えを紙に書いてみてください」
「書いているうちに、俯瞰して今の状況を眺められ、妙案が浮かぶこともあるから」

でも、彼らがそれを実際にやるかと言うと、ほとんどの人は再び頭の中だけでグルグル考えているようです。わたしにはそれが不思議で仕方がありませんでした。
そこであるとき、同じ状況から抜け出せずにいる人に尋ねてみました。
「なぜ、紙に書こうとしないんですか?」 すると、彼は答えました。
「何を書いていいか、わからないから」

もう少し踏み込んで聴いていくと、彼の本当の答えは、こうでした。
「悩みの答えを書こうとして、それが思い浮かばず、手がとまったままだった」

そのときわたしはハッと気づきました。紙に書くということの定義がこの人とわたしとは違うのだと。彼の発想は、「答えを探して、それを紙に書く」でした。
これでは「紙に書く」ことが「手段」にはならない。この発想を変える必要があります。

わたしの発想は、「紙に何かを書きながら、答えを探す」です。はじめから一発で正解を探し当てようと思うから、はじめの一歩が踏み出せないのです。

あとで何度も「上書き更新」する前提で、今の考えをとりあえず書く。
3日経つと、その3日間の経験を蓄積した自分が「3日前の考え」に対して修正したくなるところが出てくる。そこを上書き更新していく。「あとで上書き更新する」ことを前提にすれば、いくらか肩の力も抜けて、気軽に書き始められるようです。これは、ビジョン設定やプランづくりでも同じことだと思いました。これからは、書きながら考えましょう。